まず、骨を知ろう!
背骨はカラダを支える。家にたとえるなら柱や梁(はり)のように、屋根の重みを支える屋台骨というくらい大事な役割を持ちます。背骨にとどまらずカラダの骨は、
内臓を保護する肋骨(ろっこつ)や筋肉とともに運動を営む手足の骨など、いずれ劣らぬ重要な役目を負っています。
骨には「硬骨」(骨塩の沈着した硬い骨)と「軟骨」があります。いわゆる骨とは、よく理科室で見かける骨格標本の骨、硬骨のことをいう場合がほとんどです。
一方、軟骨は骨の骨端や関節、椎間板(ついかんばん)などにあり、弾力に富み、骨とともにカラダを支えています。
骨はたんぱく質でできた繊維(コラーゲン)に、カルシウム、リン、マグネシウムなどのミネラル(骨塩)が付着してできています。建物にたとえれば、鉄筋がたんぱく質の繊維、
ミネラルがコンクリートに当たります。骨の病気である骨粗鬆症は、この鉄筋が錆(さ)びて細り、コンクリートがひび割れて崩れかけたボロボロの建物のような状態になることをさします。
骨は生まれ変わる
骨はカラダの成長とともに伸び、太くなる。大人になり、カラダの成長が止まったら骨の新陳代謝も止まると思うかもしれません。しかし、骨はカラダの他の部分と同様に生きており、つねに新陳代謝を繰り返しているんです。
骨には骨を作る「骨芽細胞」と、逆に骨を溶かす「破骨細胞」があります。破骨細胞が古くなった骨を溶かし(骨吸収)、骨芽細胞がコラーゲンを分泌し、その上にカルシウムを定着させ骨を作ります(骨形成)。
この2つの細胞の働きで、骨は少しずつ新しいものと入れ代わり(骨代謝)、一定の強度を保つことができます。この骨代謝は盛んに行なわれ、骨は死ぬまで生まれ変わり続けていくんです。
骨の病気「骨粗鬆症」とは
骨粗鬆症とは、骨の骨量が減少し、骨がもろくなる病気だ。骨の中が軽石のようにすき間だらけとなるため、転んだだけでも簡単に骨折してしまいます。
骨中のカルシウム量は、誰もが20代から30代をピークに年をとるにしたがって減っていきます。骨粗鬆症は、この骨の老化現象が進み過ぎて起こるもので、別に新しい病気ではありません。
平均寿命が延び長生きする人が増えたため、病気が顕在化し、患者数が増えるという皮肉な結果となっているということです。
骨粗鬆症の怖いところは、その初期にはまったく自覚症状がないということ。実際、転倒などで骨折して初めて気づくケースが多く、骨粗鬆症が進行すると、腰や背中に慢性的な痛みやだるさを感じるようになります。
それを年のせいにして放っておくと、尻もちをつく、重い物を持ち上げる、といった日常の動作で簡単に骨折してしまうようになってしまいます。
高齢の女性に患者が多いのは
骨粗鬆症が男性より女性に多く見られるのはなぜでしょうか? 骨粗鬆症の原因の1つがカルシウム摂取量の不足になります。骨のカルシウム量は、20歳から30歳頃ピークを迎えます。
これを「最大骨量」といい、平均で男性は1グラム/㎠、女性は0.7〜0.8グラム/㎠ほどになります。つまり、女性は男性より2〜3割のハンデを負っていることになるんです。これが第一の理由です。
第2は、女性ホルモンの減少による影響です。カラダの中では、数多くのホルモンが互いにバランスをとりながら働いています。その中の1つ「副甲状腺ホルモン」は、
骨を溶かす(骨吸収)ように働きかけ、甲状腺から分泌される「カルシトニン」というホルモンは、逆にそれを抑える働きがあります。女性ホルモンである「エストロゲン」は、
副甲状腺ホルモンの働きを抑制し、カルシトニンの働きを促進することで、骨代謝のバランスをとっています。しかし、閉経を迎えた女性は、このエストロゲンの分泌が急激に
減ってしまいます。閉経前に比べると、驚くことにその分泌量は10分の1にまで減少するといわれています。つまり、これによって骨からカルシウムが急激に失われていくことになるんです。
骨粗鬆症を防ぐためのポイント
骨粗鬆症を防ぐための3つのポイント
❶ カルシウムを十分に摂る
骨粗鬆症予防策の第一は、骨の材料となるカルシウムを十分に摂ることです。乳製品はカルシウムを多く含み、その吸収率が高いことが知られています。牛乳、チーズ、ヨーグルトなどを食べるようにしましょう。
❷ 日光浴をする
骨粗鬆症予防に欠かせないのがビタミンD。日光を浴びると、皮下脂肪でビタミンDが作られます。目安としては夏場は木陰で1日30分、冬場は戸外で1時間ほど日光を浴びれば十分です。
❸ 運動をする
運動不足は、骨粗鬆症を引き起こす原因の1つ。筋肉を刺激する軽い運動、例えばウォーキングやダンベル体操、スクワットなどはかなり効果があります。高齢者なら、毎日30分〜1時間程度の散歩を心がけましょう。
これらの予防策は、高齢者でも続けて行なうことでかなり効果があります。ぜひ毎日の生活に取り入れたいですね。また妊娠・授乳でカルシウムを大量に失うことも理由の一つと考えられますが、
妊娠中や授乳期間中には腸管でのカルシウム吸収が飛躍的に高まります。「妊娠3か月までは骨のカルシウム含量が低下しますが、妊娠6か月目には骨量の減少は回復する」と考えられています。